ちひろさん。という話。
あるテーマの中で、“きっとこの先、これ以上の出会いはないんだろうな”と思わせてくれるマンガが、たまにあります。
今回そんなことを思ったマンガがこの
「ちひろ」とその続編にあたる、
「ちひろさん」。
先日、スタッフ間で「風俗マンガって何があるのか」という話になりまして、
今まで知っていたマンガから、この業界に入ったからこそ興味がわいた作品までいろいろな話をしながら検索で知ったのがこのマンガ。ついこの間まで知りませんでした。
(作者の安田先生はショムニを描いている方ですね)
そしたらたまたま、ある女性が熱く語ってくれまして、
“すぐ読んでみよう!”と思い立って購入したのがこの縁です。
結果・・・一言でいえない“名作”でしたね。
最新刊まで一気に読みました。
人気風俗嬢「ちひろ」の周りの人間模様と、ちひろの内面を描いている物語。
よくある、風俗ストーリー物とは違って、“風俗日常系”とでもいう作風でしょうか。
しかもエロではない、人間ドラマなんです。
前作「ちひろ」は風俗現役時代を、今連載中の「ちひろさん」には前作から数年後、風俗店を完全に辞めて、ただその過去を隠す事無く、弁当屋の看板娘として街の人気者になったちひろさんと、その周りのクセのある人たちの日常が描かれます。
なんというか、じんわり感動するんだよなぁ。
風俗ものって“出来すぎたシンデレラストーリー”か、“やるせない話”か、“ただのエロ”になりがちなので、こんなマンガ読んだこと無いなぁなんて思っていました。
でもその“日常系”が一番リアルで面白いんですよね。
このちひろさんの“誰も好きじゃないから、誰でも好きになれる”という雰囲気とか、周りの人のリアルな反応と温かさとか、嫉妬と親しみとか、幸せと孤独とか、渇きと潤いとか。
そう、この白でも黒でもないグレーの気持ちがすごく上手く表現されているマンガだなぁと感じるんです。
僕はこのマンガのちひろさんに似た人を知っているんです。
芯があって、凛としているけど柔らかく、強い人。
たまに孤独を、欲しがる人。
みんなを好きなようで、実は誰も好きじゃないんだろうなって人。
(恋愛的な意味でね)
そしてすごく、純粋。
多分色んな人の周りにも、こう思える人がきっといるんでしょうね。そして清々しく見える。
まぁ、似ている感じがするというだけで、ちひろさんほどの“自分の道”を歩く人は大変だろうから、“そこまでできない”っていうのが、人間っぽいんですけどね。
(ちひろさんはちょっと瀬戸内寂聴さんみたいなので)
そんな風俗というテーマにはぴったりなグレーなマンガです。
でも清々しい、透明なマンガです。
「ちひろ」からでも「ちひろさん」からでもどこからでも読めるマンガ。
読めばわかるさ。
↑最新刊
まだ連載中なので、この先が楽しみですね。
ではでは。